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見た夢の日記。

自由きまま。日常から非日常まで幅広く渡り歩く。

鳴る。

冷たい音が響く。

 

冷たいのに暖かな気持ちになる、

とても不思議な音だ。

 

その無機質な音が少しばかり

にゃあ、という有機的な音にかき消される。

 

音が鳴る、その箱に興味津々といった

黒猫は箱と私を交互に見る。

 

私はやんわり微笑んでやった。

猫は何か感じ取ったようで

擦り寄ってくる。

 

暖かい体温と、ちょっと鼻をくすぐる

獣の臭い。そのどちらもが

この猫が「生きている」ことを

示していた。

 

擦り寄ってくるその小さな

頭蓋骨をそっと撫でてやった。

 

ごろごろと喉を鳴らし、

更にじゃれついてくるようになる。

 

私はふと立ち上がり、

先程から音を鳴らすゼンマイ仕掛けの

箱を見下ろしてみる。

 

美しい木目、暖かな色合い。

しかしながら、響かせているのは

鉄が反発する音ばかりだ。

 

ロマン的で美しく、心に響く

その鉄の歌声は、私の心の

空虚さを埋めているように思う。

 

だから、蹴り飛ばした。

 

ガタガタと音をたて

遠くへ転がる小さな箱は、

どういうわけかやがて見えなくなった。

 

そして再び静寂が当たりを包む。

 

「私は歌えない。鉄でも歌えるのに、

私は、何も歌えない。」

 

この静寂を、あの美しく

暖かな気持ちにさせる音のようには。

 

決して歌えないだろうと、

しばし考え込んでいた。

 

ふと気がつくと、先ほどの

黒猫が目の前にいた。

 

「…よしよし、遊んでほしいか」

 

この時私は気づかなかったが、

実は歌を歌っていた。

 

1人と1匹の会話という歌声を

鳴らしていたのだ。