見た夢の日記。

自由きまま。日常から非日常まで幅広く渡り歩く。

おそうじ。

右を見る。今日も魔法で

水を沸かしている同棲者がいた。

 

日常的に魔法、科学は同棲している。

昔は「行き過ぎた科学は魔法となんら

区別がつかない」とか言っていたらしいが。

 

今となっては魔法体系を

科学的に調査、実験を重ねた結果、

混ざりものの「術式」が生まれた。

 

おかげで人類は大発展。

 

空飛ぶ車にタイムマシン。

ある意味文明の飽和が起こるようにも

思えるが、まだまだ人類は

先を行こうとしているようだ。

 

「なに?また寝転がりながら

考え事でもしてるわけ?」

 

今ではほとんどの人が

使えなくなった魔法を彼女は

使役している。

 

「んー…まぁそんなところかな…」

 

そう言いつつ体を起こす。

 

「今日もドリップコーヒーでいいかな?」

そう私に問いかけてくるのは

ユリア、という白金の見目麗しい

少女だった。

 

「ああ、お願いするよ。

あとフレンチトーストでいいかい?」

朝食の注文をする。

 

「だめだよ、今日は

鮭定食の約束でしょ?」

見事に却下された。というか

フレンチトーストよりも手が込んでるし、

毎朝大変かと思っての注文だったが。

 

「…まぁ食べられればなんでもいいしな」

 

なんて口に漏らす。

見事ユリアのお咎めが入った。

 

「またそういうこと言う!アリスは

私の手料理じゃ満足できないのかしら?」

 

「そうじゃないさ、というか

原因はわかっているくせに」

 

「はいはい、どうせ私のせいですぅーだ!」

 

んもう、とそっぽを向きながら

朝食を並べていくユリア。

 

いつも通り、2人で

朝食を共にする。

 

最も、私は味覚音痴に等しいので、

味についてはよくわからない。

 

彼女はそれをなんとかしたい、とは 

言っているが、多分今後もどうにも

ならないとは思う。

 

だから私は、食事に関しては、

というか味覚的部分においてはさほど

幸福を感じない。

 

「美味しいとか言ってくれないのかなぁ?

私さ、もうかれこれ何年も君の面倒を

見続けてるけど1回も聞かないよ?

それにこんなに頑張って!

朝!

昼!

晩!

あとおやつ!

も手作りしてるのに、なんか

張り合いがなくて困るよぉ」

 

彼女がまたごね始める。

「私も、もう何年も君の愚痴を

聞いているし、これでも

感想の1つは言おうと必死なんだけどな。

頑張って私の食事を用意させているのに

毎度申し訳ない気持ちでいっぱいだよ。

だから次からはー。」

 

「だめ!絶対にだめ!

『美味しい』って言ってくれるまで!

絶対に作り続けてやる!いっそ

私が死んでも作り続けてあげるわ!」

 

まぁた始まった。

まったく、意固地なのは相変わらずだ。

 

「私から味覚を奪ったのは君だけどね…

まぁ、おかげでこうして生きていられるけどさ…」

 

私は1度、死んでいる、というか、

今目の前にいる少女に殺されている。

 

「ほんとにね、だいたい崩壊が

起こって生きていられるのが奇跡じゃないの」

 

そう、今の世の中には

おおよそ窒素89%、酸素21%の

空気構成の中に微量ながら

「魔素」が含まれている。

これにより、たいていの人は

術式を利用できるのだが。

 

実をいえば、これは毒素なのだ。

濃い場所に行ってしまったりすると、

体の構成組織の崩壊、改変が起こり、

魔物という怪物に姿を変えてしまうのだ。

 

私はもともと、魔物に変わってしまった

生物を殺し回る「掃除屋」だった。

 

人間も、崩壊が起こるとほぼ例外なく

魔物になる。だからといって、

いくら怪物となろうともその精神や

思考は崩壊が起こる前とさほど変わらないが。

 

まぁ、ともかく。

 

崩壊が起こった私の体を焼き払い、

錬成したのが目の前のユリアだ。

 

その後遺症で、もともと

私には扱えなかった、魔法が

少しばかり扱えるのと、味覚を失った。

 

というわけなのである。

 

ちなみに、魔物がもとは

生物、ないし人間だったモノという

事実は伏せられている。

 

その代わり、魔法使い達が

魔法を扱えない者を排除するために

生み出した物体として扱われている。

 

おかげで、数年前には

魔女狩りが行われたくらいだ。

 

どうも人間は、大きな力を

恐れて排除しようという傾向があるらしい。

 

ユリアも魔女狩りの時は大変な

思いをしたらしい。

 

そうこう考えているうちに、

朝食を食べ終えた。

 

最後に1杯のコーヒーを飲み干す。

これが私の朝の日課になっている。

 

そして、今日も掃除屋の

仕事に走り回るのだ。

 

ちなみに、先ほどの続きだが、

魔女狩りはもう行われていない。

そんなことをしている暇がないくらいに

魔物が溢れかえってしまったからだ。

 

今は魔女の存在は黙認されているといえる。

 

「身支度も済んだね、じゃあ

気を付けて行ってらっしゃい♡」

 

「うん、行ってくるよ。」

 

いつも通り、黒いコートを羽織る。

 

魔物を殺さなければならない、

ということはほぼ間違いなく抵抗されるし、

結果殺し合いになることが大半だ。

 

なのでこのコートは耐衝撃性、

耐切断性、耐貫通性に非常に

優れている材質で出来ている。

 

そして、愛用のバイクに跨り、

魔物出現ポイントまで移動する。

 

ちなみにバイクは時速

300km近くは出る。

なるべく足は速い方がいい。

 

もちろん、自分が操縦できる

範囲で、だが。

 

5分と経たずに目的地に到達した。

バイクを安全な場所に止め、

 

周囲を散策する。

ふと、気配を感じ、後ろを向くと、

何かが飛びかかってきていた。

 

迷わず回し蹴りを叩き込む。

 

物体は木にぶつかり、そのまま

地に臥す。だが、何かがおかしい。

依頼に上がっていた相手はこんな

「小型」では無かったはずだ。

 

「うぅ…おカあさン…いタいよぉ…」

 

…なるほど。

 

そして、私は空に握りこぶしを作る。

 

すると、手の中には私の背丈ほどの

長さの幅広の剣が握られていた。

銀に輝くそれは、柄にこれまた

刃の幅ほどの玉が嵌められていた。

 

深い青の中に、煌めく星々が見える。

 

私はその剣で、容赦なく

「小型」の足を叩き切る。

 

おびただしい量の血が流れ、

黒い霧が立ち上る。

 

この黒い霧が魔素だ。

可視できるほどに濃い。

 

「うガあああアア!!!!!!!いダイイイイ!!!!!!!」

 

小型は半ば狂ったように叫ぶ。

 

可哀想、といえばそうかもしれない。

なにせ、元は年端もいかない

子供だと分かるほどだ。

 

だが、容赦するわけにはいかない。

私は「仕事」で来ている。

魔物の血にまみれる「仕事」に。

 

それにしても、とても大きい声で

泣き叫んでいる。これなら…

 

「…きた。」

 

ズシン、と大きい足音を立てて

近づいてくる。どうやら走っているらしい。

 

それもそうか、「自分の子」を

痛めつけられているのだから。

 

「ワタしのこになにスるのおおおお!!!」

 

顔が狂気に満ちた怒りを表していた。

今にも、自分を殺そうとしている。

 

その目の前で。

この「大型」の「子供だったもの」の

首を切り飛ばした。

 

「大型」は目の前に起こった惨劇を

受け止めるのに時間がかかっていた。

 

その隙に大型に思い切り接近する。

 

自分の得物の射程に入った位置で

思いっきり立ち止まり、勢いを活かして

切り上げる。

 

さすがに20mは離れていたが、

術式で自分の脚力を強化し、

速度を上げていた。

 

まさしく、急接近、といったところだ。

 

さらには、脚力の強化を

立ち止まった瞬間に腕に移転し、

威力に転換した。

 

この「大型」もこれには

ひとたまりもないだろうし、

できることならこのまま息絶えてほしい。

 

しかし、それは叶わぬ夢らしい。

 

大型はそれはもう大声で

吼え、暴れ回った。

 

痛みに悶絶している、ということは

何となく分かった。ただ、暴れ回る

おかげで、狙いが定まらない。

 

仕方が無いので、

魔法で大型の手足を凍らせた。

 

もはや何が起きているのか

わからない、という顔をしている。

 

痛み、苦しみ、絶望しているのが

伺えた。そんな「彼女」の首を

容赦なく撥ねた。

 

元が人だろうがなんだろうが

殺す。

 

それが私のー

 掃除屋の仕事だ。